電波天文学入門

電波望遠鏡は、巨大なパラボラアンテナで天体からの電波をとらえます。

単一鏡、結合干渉計、VLBI

望遠鏡は、大きくすればするほど解像度(視力)と感度が向上します。このため天文学者は巨大な望遠鏡を必要としてきました。一方、望遠鏡の解像度は観測する電磁波の波長に反比例するため、望遠鏡の口径が同じとき、可視光や赤外線(波長数百ナノメートル)に比べて電波(波長数ミリメートル)を観測する場合はおよそ1万倍ほど解像度が低くなります。可視光望遠鏡よりも多くの電波望遠鏡のほうが口径が大きいのは、解像度をできるだけ向上させるためです。このように、ひとつのパラボラアンテナで一つの電波望遠鏡を構成するものを「単一鏡」と呼びます。

しかし、際限なく巨大なパラボラアンテナを作ることは不可能です。この弱点を克服するのが、複数のパラボラアンテナを結合させて巨大な一つの望遠鏡とする、「干渉計」という仕組みです。この仕組みを使えば、アンテナを離した距離と同じ口径の望遠鏡と同じ解像度が得られます。アンテナ同士を金属線や光ファイバーで直接つなぎ、データをリアルタイムに専用スーパーコンピュータで処理するタイプの干渉計を、結合型干渉計と呼びます。これに対して、アンテナを数千キロメートルという広範囲に点在させ、データを記録して一か所に運び、あとから結合(相関)処理を行うタイプの干渉計を超長基線電波干渉計(Very Long Baseline Array: VLBI)と呼びます。

単一鏡(野辺山45m望遠鏡)、結合干渉計(ALMA望遠鏡)、VLBI

それぞれの得意不得意

単一鏡、結合型干渉計、VLBIの3種類でもっとも解像度が高いのは、VLBIです。ではすべての電波望遠鏡をVLBIにすればよいかというと、そうではありません。これらには、それぞれ長所と短所があるのです。

単一鏡はその大きさが限られるため、解像度はあまり高くありません。そのかわり、視野を広くとることができます。星形成が起きている分子雲の全体像や、近傍銀河のガスの分布を銀河全面にわたって描き出すといった観測は、視野の広い単一鏡で行うのが効率がよいのです。こうした広視野観測で見いだされた興味深い天体を干渉計で詳しく観測する、という役割分担を行うことができます。

結合型干渉計は、アンテナを広く展開することで単一鏡を大きく上回る解像度を得ることができます。若い星の周囲の惑星形成現場を詳しく観測したり、遠方銀河における星間物質の分布を調べたりと、さまざまな用途に使われます。一方、干渉計の原理的な欠点として、ぼんやりと大きく広がった天体を観測できないという点が挙げられます。これをカバーするために、単一鏡とデータを組み合わせて処理する手法が開発されています。

VLBIは、きわめて高い解像度を実現することができます。メーザーの動きを精密に測定したり、活動銀河核から放出される電波ジェットの構造と運動を描き出すにはVLBIが必要です。一方VLBIの欠点は、非常に高い解像度と引き換えに感度が低くなってしまうことです。このため、惑星形成領域や銀河に漂うガス雲を観測することは困難です。

下図は、国立天文台が運用を行うさまざまな電波望遠鏡に対して、その観測可能波長と解像度の関係をあらわしたものです。天文学者たちは、それぞれの望遠鏡の特徴を生かして、各々の観測対象に適した望遠鏡を選んで使っています。